多くのNAGライブラリのルーチンは「インコア」方式で、すべてのデータを事前にメモリに保持する必要があります。しかし、極めて大規模なデータセットを扱う場合や、すべてのデータが一度に利用できない(つまりデータがストリーミングされる)場合、これは実現不可能な場合があります。この課題は、オンライン学習やリアルタイム予測を行う機械学習システムにおいて特に重要です。NAGライブラリは、このような状況に対応する5つの重要なルーチンを提供しています。これらのルーチンは、大規模データセットの要約統計量の計算、データストリームからの分位数の推定、移動窓での統計量の計算など、現代的なデータ分析の重要な課題に対応し、特に分散機械学習システムにおける特徴量のスケーリングや、オンライン学習モデルの適応的な更新において重要な役割を果たします。
NAGライブラリのストリーム統計処理機能
1. 単変量要約統計量の計算と結合
- [g01atf]:単一変数の平均、分散、歪度係数、尖度係数を計算します。この機能は、オンライン学習システムにおいて特徴量の分布特性をリアルタイムで把握する際に有用です。特に、ストリーミングデータの特性を継続的にモニタリングし、モデルの適応的な更新が必要な場合の基礎統計量として活用できます。
- [g01auf]:2つのg01atfの呼び出し結果を組み合わせ、結合されたデータセットの統計量を返します。大規模な分散学習システムにおいて、各ワーカーノードで計算された統計量を効率的に統合する際に重要な役割を果たします。これにより、ペタバイト規模のデータセットでも、統計的特性を失うことなく分散処理が可能になります。
2. データストリームからの近似分位数計算
- [g01anf]:既知サイズのデータセットに対する近似分位数を計算します。データ量が事前に分かっている大規模バッチ処理での特徴量のロバストなスケーリングや、分位数ベースの異常検知システムの実装に適しています。
- [g01apf]:未知サイズの継続的なデータストリームに対する近似分位数を計算します。リアルタイムシステムでの動的なパーセンタイルベースの閾値設定や、オンライン異常検知システムでの分布の変化検出に活用できます。
3. 移動窓での統計計算
- [g01waf]:移動窓内での平均と標準偏差を計算します。時系列予測モデルの特徴エンジニアリングや、データストリームの季節性・トレンド分析において重要な基礎統計量を提供します。また、センサーデータの異常検知やリアルタイム金融データ分析での移動統計量の効率的な計算に適しています。
まとめ
NAGライブラリのストリーム対応統計ルーチン群は、現代の機械学習システムが直面する主要な課題に効果的に対応します。従来の「インコア」処理では扱えない大規模データセットに対してメモリ効率の高い処理を実現し、ストリーミングデータに対する統計量の逐次更新を可能にします。さらに、大規模データの並列処理において統計的整合性を保ちながら結果を統合する機能を提供することで、特にオンライン学習や分散機械学習システムにおける信頼性の高い統計計算基盤として機能します。
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