回帰分析は機械学習において最も基本的かつ重要な手法の1つです。データに含まれる特徴量(説明変数)と目的変数との関係を数学的にモデル化することで、未知のデータに対する予測や、変数間の関係性の理解を可能にします。単純な線形関係から複雑な非線形関係まで、様々なデータの特性や目的に応じて適切なモデルを選択することができます。特に近年のビッグデータ環境下では、高次元データに対する正則化や変数選択など、より洗練された回帰手法の重要性が増しています。
NAGライブラリの回帰分析機能
1. 基本的な線形回帰分析
- 単純線形回帰(g02ccf):欠損値を含むデータに対して定数項のある単純な線形回帰を実行できます。品質管理や簡単な予測モデルの構築に適しています。
- 一般線形回帰(g02daf):複数の説明変数を扱う多重線形回帰を実行します。経済予測や工学的な性能予測など、より複雑な予測モデルの構築に利用できます。
2. モデル選択・変数選択機能
機械学習における特徴量選択とモデル選択は、予測精度の向上と解釈可能性の両立において重要な役割を果たします。NAGライブラリは、この目的のために以下の機能を提供しています:
- ステップワイズ回帰(g02eff):変数の重要度に基づいて段階的にモデルを構築します。前進選択と後退除去を組み合わせることで、最適な変数の組み合わせを探索します。特に、多数の説明変数から重要な変数を選択する必要がある医療研究や金融モデリングで有用です。
- LASSO/LARS/前進ステップワイズ回帰(g02maf, g02mbf, g02mcf):高次元データにおいて意味のある変数のみを自動的に選択し、解釈可能なモデルを構築できます。遺伝子発現データのような変数の数が観測数より多い場合の分析に特に有効です。予測精度を保ちながら、モデルの複雑さを制御できるため、センサーデータの解析やテキストマイニングに適しています。大規模データセットに対してはクロスプロダクト行列を利用した効率的な計算が可能です。
3. 頑健な回帰分析
- ロバスト回帰(g02haf, g02hdf, g02hff):外れ値を含むデータセットでも信頼性の高い推定が可能です。実世界の機械学習タスクでよく見られる、ノイズの多いデータや異常値を含むデータの分析に適しています。金融データのような極端な値が存在する可能性がある分野で特に有用です。
4. 正則化・制約付き回帰
機械学習において、高次元データでの過学習を防ぎ、予測性能を向上させるために、様々な正則化手法が用いられます:
- リッジ回帰(g02kaf, g02kbf):説明変数間に強い相関がある場合の多重共線性問題を解決します。リザーバーコンピューティングのような時系列予測手法での学習に活用できます。予測精度の向上と過学習の防止を同時に実現します。
- Elastic Net (e04gnf):L1正則化(LASSO)とL2正則化(リッジ回帰)の利点を組み合わせた手法です。グループ化された変数がある場合の変数選択に特に効果的です。高次元データでの予測モデリングや特徴量選択に広く応用できます。
- 最近傍相関行列(g02aaf, g02abf, g02akf):不完全または不正確な相関行列を有効な相関行列に変換します。ポートフォリオ最適化や、リスク管理における共分散構造の推定に不可欠です。大規模な多変量データの次元削減や特徴抽出の前処理として活用できます。
5. 高度な回帰手法
- 部分最小二乗(PLS)回帰(g02laf, g02lbf, g02lcf, g02ldf):説明変数間に強い相関がある場合や、説明変数の数が観測数より多い場合に有効です。教師あり学習における次元削減手法として、スペクトルデータや化学計量データの分析によく使用されます。潜在変数を通じて予測と変数の解釈を同時に行うことができます。
- 線形混合効果回帰(g02jaf, g02jbf, g02jdf):階層的なデータ構造を持つ場合や、反復測定データの分析に適しています。教育データの学校・クラス・生徒の階層構造や、医療における患者の経時データの分析に最適です。個体差と測定の相関構造を適切にモデル化できます。
- 非線形制約付きデータ適合(e04gnf):非線形の関係性をモデル化する必要がある場合や、制約付きの最適化問題として定式化される場合に使用します。物理モデルに基づく制約付きの回帰や、複雑な工学システムの同定に活用できます。カスタマイズ可能な正則化項により、問題に応じた柔軟なモデリングが可能です。
6. データ処理・補助機能
- 平方和行列の更新(g02btf):新しい観測値での重み付き平方和行列の効率的な更新が可能です。
- 相関行列計算(g02bwf):平方和行列から相関行列を計算します。
- パラメータ推定(g02dkf, g02dnf):制約付きモデルのパラメータ推定や、推定可能な関数の評価に利用できます。
まとめ
これらのルーチンは、最新の統計的手法と数値計算アルゴリズムに基づいており、高い数値安定性と計算効率を提供します。特に、高次元データや大規模データセットに対する解析においても信頼性の高い結果を得ることができます。また、欠損値の処理や外れ値への対応など、実践的なデータ分析で直面する様々な課題に対処することが可能です。
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